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UDT2010: part3 (Lynx AES16e-SRC)
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HAL

hardware review of home theater and self-made devices

UDT2010: part3 (Lynx AES16e-SRC)

Universal Digital Tranport (UDT2010) Part3

今回はオーディオ性能の概要を掲載しますが、Part1では自作ケースの概要、Part2では基本性能を紹介しています。part3ではLynx Studio Technology のAES16e-SRCのセットアップを中心に、UDT2010のPCオーディオとしてのパフォーマンスを書いてみます。Part4ではブルーレイHDオーディオのAES出力を紹介しています。

Universal Digital Tranport (UDT2010) Part1: PCケースの自作(1Uラックマウント型)
Universal Digital Tranport (UDT2010) Part2: セットアップとパフォーマンス
Universal Digital Tranport (UDT2010) Part3: Lynx AES16e-SRC (PC audio Part2))—この記事
Blu-ray HD audioのsoftware decordによるAESデジタル出力(UDT2010)part4

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Universal Digital Transport 2010 /UDT2010
experimental one off product for PC audio
produced by Monolith Craft

FEATURES:
● Self-made rigid aluminum 1U case.
● Ellegant and luxury aluminum hair line finish with gold-plated bolts.
● Simple front design with signal LEDs and midship mounted optical drive.
● Low system noise by direct CPU cooling with large low-speed fan and 150W DC drive.
● Fast data access by SSD Striping.
● AES 16ch studio quality digital audio interface powered by Lynx Studio Technology and HD audio bitstreaming over HDMI with FullHD 1080p via Intel Corei5 661
●Flexible signal asign and device control of sound system by ”System Architect” on ethernet.


INDEX

1. はじめに
2. AES16e-SRCのハードウエアインストール
3. 2ch用自作ブレイクアウトケーブル
4. ファームウエアとドライバのアップデート
5. Lynx Mixer
6. PCオーディオ (2ch)

6-1. Single wire AES
6-2. Dual wire AES, Dual discrete AES channel divider
6-3. Bandpass and 12-band parametric equalization
 

7. PCオーディオでのレベル調整 (HiQnet System Architect)
8. PCオーディオ (マルチチャンネル)

8-1. チャンネルアサイン
8-2. 96kHz 5.1ch FLAC 音源の再生

8-3. Linx Mixerによる自在なサラウンドスピーカーの設定

8-4. マルチチャンネルオーディオでのサラウンドスピーカの配置と性能
 

9. PCオーディオシステムブロックダイアグラム
10. ネットワークデータを利用したPCオーディオ
11. オーディオとしての音質
12. 最後に

2010.05.14: 6. PCオーディオ(2ch), 8.PCオーディオ(マルチチャンネル)の項の構成を一部改変

 

1. はじめに

そもそも今回の自作ケースUDT2010は、AES16e-SRCのために作ったと言っても過言ではありません。本邦で発売になってから最初のロットを購入しています。16chのマルチチャンネル仕様で優秀なミキサーもついているので、ネット配信のハイビットレートマルチチャンネル音源をマスタークオリティで再生することも可能です。本来レコーディングやミキシング用途のカードですが、ここでは再生専用PCオーディオ用カードとして使っています。

今回は自作ケースでのAES16e-SRCのセッティングとPCオーディオとしてのパフォーマンスを中心に書いてみます。前回のfirewireを経由したPCオーディオPart1に続くAESを使ったPCオーディオPart2です。
tc electronic Digital Konnekt x32 (PCオーディオ Part1)の記事へのリンク 

2. AES16e-SRCのハードウエアインストール

ケース全高をJIS規格1U, 50mmに収めるにはカードを寝かせないと入りません。そのためにはライザーカードが必要です。ラーザーカードは入手性が悪く、今回はサーバー向けのDirac、DIR-PESX1を使っています。PCIex1の延長カードです。機能的には全く問題なく、直挿しした時との音質差もありません。

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左上がDIR-PESX1。インストールの際にはプレート部の両端を切断してボルト固定用の穴を開けています。
カードは3ミリアルミのケースの底板、天板と仕切り板でシールドされるよう設計しています。

 

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リアパネルの外観。二つの26ピンソケットがAES16e-SRCです。IOポート部はカードの端子をそのまま外に出しています。右がportA, 左がportBです。ライザーカードを利用するとカードが天地逆になるので排熱を考慮してその直下に排気口を儲け、エアフローを確保しています。リアパネル固定用の六角ボルトは純正のものを流用しています。

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純正のブレイクアウトケーブルCBL-AES1604-AES16/AES16e Eight-channel HD26 to XLR AES I/O Cable.
クロックケーブルがあるため、HD26という特殊なマルチピンアウト仕様です。

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ブレイクアウトケーブルは通称スネークケーブルとも呼ばれ、重くまたコシも強いので、接続部の強度が必要です。そのためリアパネル該当部は6ミリ厚とし、十分な補強をしています。上の写真はケース工作段階の写真です。一枚のアルミ板からリアパネルや補強板を切り出しています。カードの固定部は3つの補強板でリアパネル、天板、底板にボルト固定しています。

 

 3. 2ch用自作ブレイクアウトケーブル

2chのみしか利用しないシステム調整・検証用として軽量小型のクロック入力付きブレイクアウトケーブルも自作しています。

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 プラグカバーは航空電子の金属製、HD26オスは汎用品、AESデジタルケーブルはBelden 1801B, XLRプラグはノイトリックNC3MXCC, クロックケーブルはApogee Wide Eye同軸, BNCプラグはカナレを使っています。ハンダはWBT Silver Solder WBT-0800を使用しました。

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上はピンアウトテーブルと実際のHD26のハンダ付け側から見たチャンネルアサインです。Port Jumperはデフォルトの4/4CHNLに設定しています。ちなみにジャンパーを8 CHNLに設定するとPortAがすべてInput, PortBがすべてOutputになります。

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プラグ内部のハンダ付けの様子です。AESはOUT1,2chのみですが、プラグ内部でOUT3,4chからIN 1,2chチャンネルへのシャント回路を入れています。これは出力信号をLynx mixerのコントロールパネルで確認するための検証回路です。portAではクロック端子は外部マスタークロック入力になります。細かい部分のハンダ付けで、難易度の非常に高い作業です。

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ノイトリックのAES用XLRプラグNC3MXCCです。アナログバランス用とは構造が違うので注意が必要です。より厳密なシールドが施されています。

4. ファームウエアとドライバのアップデート

 いずれも定期的に更新されます。更新は簡単です。公式サイトよりダウンロード、該当ファイルを起動するだけで更新が完了します。以前はやや複雑でしたが、最近のアップデートは簡単です。

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現時点(2010.05.10)では上のファイルが最新です。Windows7 64ビットにも対応しています。
Lynx MixerのAbout表示で現在のドライバ、ファームウエアのバージョンが確認できます。

 

5. Lynx Mixer

ドライバソフトウエア、すなわちLynx Mixerはタスクバーに常駐します。Adapter, Record/Play, Outputsという3つのプログラムからなり、ここですべての動作をコントロールできます。

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Adapter                                                  Record/Play

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Outputs                        Adapter+Record/Play+Outputs 同時表示

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Adapterはこの手のデジタルカードでもっとも重要なクロックの設定とInput端子から入る信号の情報表示、EmphasisなどのOutput端子の仕様制御で構成されます。Input端子の項目では16chすべてのチャンネルでSRC(サンプリングレートコンバータ)を有効にするかどうかが設定できます。

Record/Playではinput端子から入る信号を表示しますが(record)、PCの内部音源の信号も扱います(Play)。Input端子の信号はアサインが可能です。PlayはPCから出てくる信号が1chから順に表示されます。全チャンネルビット数表示があり、MUTEやDither処理が可能です。

Outputsはアウトプット端子に出力する信号をルーティング機能を持っています。マトリックスルーティングが可能で、Input端子で受けた外部入力、PC音源すべてを各output端子に割り当てることができます。勿論ミキシングも可能です。各アウトプット毎にMUTE Ditherのオンオフが可能です。上のSignal Flow Diagramがわかりやすくこれらの機能をまとめた図です。慣れるとLynx Mixerも問題ありませんが、RMEの方がよく出来ています。

 6. PCオーディオ (2ch)


6-1. Single wire AES

自作ブレイクアウトケーブルでOutputsはch1,2のみ使用します。PC音源はRecord/Playパネルに表示されます。OutputパネルでPlay01+02をOut1L, Out1RにアサインすればOutput ch1, ch2から再生信号が出力されます。自作ブレイクアウトケーブルはこの設定を利用して2ch音源をAES出力しています。音質は純正コードよりも締まった感じです。

6-2. Dual wire AES, Dual discrete AES channel divider

いささか古い規格ですがAES16eはdual wire AESにも対応しています。 過去の記事でも若干触れましたが、UDT2010からSystem Architectで、DriveRackとAmcronの設定を変えることができるので、DriveRack2台をそれぞれL,Rチャンネルのフィルタリングを行わせるようアサインすると、トライアンプ、フルデジタルdual wire  AES 2ch systemにする事もできます。デジタルチャンネルデバイダーのデュアルモノという構成です。

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その他基本的なPCのセットアップなどは 8.マルチチャンネルの項に詳述しています。 マルチチャンネルの場合のUDT2010以降の音響システムの概要は 9.ブロックダイアグラムの項に示しています。


6-3. Bandpass and 12-band parametric equalization

 UDT2010はTranspot機能のみでなく自ら音響システムを制御・変更できるコントロールPCとしての側面も持っています。上に書いたチャンネルアサインを変更するだけでなく、クロスオーバーやPEQのなどの音響機器の基本的設定をシームレスに変更することが可能です。

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2chの場合のDrive RackによるJBL3632-T,3ウエイマルチ用のバンドパスフィルターです。Butterworth, Bessel, Linkwitz-Rileyのフィルターの中から任意のものを選べます。ここではLinkwitz-Riley24dB/octを適用しています。8.マルチチャンネルの項 では2つの46センチサブウーファーを追加するので、この設定を若干変更します。この場合実質上、4ウエイマルチになります。下図がその設定で、低域の設定を若干変更しています。

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勿論バンドパスだけではフラットな特性は得られません。更に前もってFFTで測定しながらパラメトリックイコライザーを入れています。

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Drive Rack 4800のPEQ (20Hz-20kHz)
測定系はSmaartV6, RME Fireface400, Earthworks M30を使用

 2ch, マルチチャンネル共通のフィルタリングです。1ch分の3バンドの調整画面を合成した図です。デジタル処理なのでマウスのドラッグでそれぞれのフィルターの適用範囲と強度を調整できます。ユニットの特性に加え部屋の音響特性を大きく反映しています。高域のイコライジングが目立ちますが、これはロールオフする高域の為のホーンEQです。難しいのはバスマネージメントです。設定を保存しておけば、ファイルを呼び出すだけで変更できます。上は男性ボーカルの中低域を意識して調整したものです。

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3ウエイマルチの各ユニットのディレイ調整

マルチウエイの場合、各ユニットの位相合わせも重要です。上は高域ホーン、中域2.5インチダブルスコーカー、低域15インチダブルウーファーの左右のディレイを調整したものです。ユニットの位置関係から高域を0msとして他のユニットを調整しています。

 

7. PCオーディオでのレベル調整 (HiQnet System Architect)

HiQnet System Architectでのイーサーネットを介したレベル調整

PCオーディオなどフルデジタルで機器を組んだ場合、レベル調整が重要です。コンシューマー用のプリアンプなど緩衝的な役割をもつ機器がないので、ヘタをすると高域ドライバを飛ばしてしまいます。PCの再生ソフトウエアでも出力調整ができますが、それのみに頼るのはやや危険です。操作のミスやPCの誤動作で大きなノイズや大音量がスピーカまで出力されてしまう可能性もあります。

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パワーアンプの入力調整でレベルを変える方が安全です。しかしマルチアンプやマルチチャンネルとなると調整が複数にわたるので実質上困難になります。ラインレベルだと高品質な8連ボリュームまでは入手可能ですが(参考写真上SPL Volume8)、それ以上になるとオーダーか自作になります。パワーアンプが複数にわたっても一括調整できるシステムが理想的です。ここではレベル調整は以下のような方法をとっています。

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上はハーマングループのHiQnet System Architectのコントロール画面です。dbx DraveRack4800やAmcronのパワーアンプはこのソフトウエアを介してフルコントロールできます。左にネットワーク上に認識された機器が列挙されています。右下はDriveRackのコントロールパネルです。中央上にMaster Controlとあるのが、10台全てのパワーアンプのインプットレベルとミュートを一度に制御できる自作カスタムパネルです。ソースの音源はヘッドルームを考慮したmaxに近い設定で、レベルコントロールはこのマスターボリュームで行っています。ワンクリックで全てのパワーアンプを一括ミュートできるのでソース側の機器設定変更の際もとても便利です。

実際のコントロールは下のGriffin PowerMateを使っています。USB接続で、System Architectマスターボリュームに割り当てています。関連記事: Griffin Technology PowerMateをマスターボリュームに

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Griffin Technology PowerMate          

8. PCオーディオ (マルチチャンネル)

オーディオというと2chが一般的ですが、最近は5.1chなどのマルチチャンネルのハイサンプリング、ハイビットレートのオーディオ用高音質音源をデータとして入手できます。PCではOSレベルでこれらのマルチチャンネルに対応しています。一昔前のDSP処理の擬似マルチとは違って、ソースレベルでのディスクリート収録なので、極めて高品質の再生が可能です。ハイエンドの2ch環境の音質をマルチでも実現するためにはかなりの追加機材・設備投資が必要ですが、その見返りは十分なものです。

室内音響調整も重要です。マルチチャンネルの場合、十分な吸音を施した方が定位が良くなります。また最終的にはいずれのスピーカーからの出音もフラットに近づけるのが理想で、ここでは業務用FFTアナライザSmaartV6で測定し、前述したDriveRackのパラメトリックイコライザを中心としたフィルタを使って調整しています。

関連記事:JBL 3632-T:吸音とチューニング、  
      dbx DriveRack 4800 ロングランレポート
      Lynx Studio Technology AURORA16
      シアタールームの設計    

  

8-1. チャンネルアサイン

 AES16e-SRCはマルチチャンネルでその本領を発揮します。5.1や7.1マルチチャンネルオーディオの場合は純正のブレイクアウトケーブルCBL-AES1604を使っています。チャンネル数が増えるだけで2chオーディオの応用編ですが難易度はやや上がります。

AESアウトケーブル4つを使います。重要なのはチャンネルアサインで、各チャンネルがLynx AES以降の既存のデジタルシステム、スピーカー出力までの経路とあっている必要があります。これはLynx MixerのOutputsパネルで調整しています。

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Windowsのスピーカーのセットアップ                Lynx Mixerのルーティング

 

手持ちの環境に合わせてチャンネルセットアップを行います。7.1chセットアップをしておけば大抵の音源に対応出来ます。サウンドのプロパティーでLynx AES16eを選択し、構成を開くとスピーカーのセットアップの画面が現れます。7.1chサラウンドを選び「テスト」を選択するとPCからテスト音源が出力されます。この場合自動的にL,R,C,サブ,RL(サラウンドバック), RR, SL(サラウンドサイド), SRと音源が移ってゆきます。それが既存のシステムのスピーカー配置とあっているかどうか検証できます。

合っていない場合はLynxのミキサーである程度アサインを変えることができます。上の写真ではPlay01+02(L+R)をOut1L,Out1Rへ、Play03+04(C+sub)をOut3L, Out3Rへ、Play05+06(RL+RR)をOut4L, Out4Rへ、Play07+08(SL+sSR)をOut2L, Out2Rへルーティングしています。DriveRack4800のチャンネルアサインに合わせる為のルーティングです。これは各システム構成で異なってきます。

8-2. 96kHz 5.1ch FLAC 音源の再生

マルチチャンネル音源の再生例です。ネットからダウンロードしたFLAC 96kHz 5.1chソースです。
再生ソフトウエア: foobar2000 v1.0.2.0 ( WASAPI),
音源:2L-Nordic Sound;  Test Bench HD audio files (Surround 5.1 FLAC 24bit/96kH)
音響システム:下記ブロックダイアグラム参照

下はNordic Soundのテスト音源のリスト。いずれもSACD収録の音源DXDなどから起こしたファイル。Stereo FLAC 24bit/192,96kHz,  Surround5.1FLAC 24bit/96kHzなどがある。クロックを変えて全ての音源が再生可能だ。他にWAVファイルも試聴できるが、今回は Surround5.1FLAC 24bit/96kHz 全12曲、計75分、容量3.11GBを中心に聴いてみた。

ジャンルはクラシックだがその中でもメロディアスで、楽器の個性と起伏のある豊かな旋律を強調するデモンストラブルな親しみやすい楽曲が中心。ミキシングで何も操作してないのかと思わせるほど自然な出音。オーケストラと室内楽の音場の違い、体腔を揺さぶるパイプオルガンや金管の低域、コントラバスなどの弦の中低域の艶、バイオリンやソプラノの濁りの無い美しい高域など聴き所は多い。ピアノの左手なども出色だ。更に演奏者の息遣いも聞き取れる。パーカッション系が少ないのが惜しい。5.1chでは音の広がりと空間の大きさが明瞭に表現されている。音源の質と同時に再生環境のクオリティーが試される作品群。あっという間の75分。

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foobarで5.1chFLAC音源を再生している様子です。左のLynx Mixerでは96kHzの外部クロックに同期し、下のレベルメーターでは計6chから出力されている様子が分かります。右のfoobarの画面でも6ch分のVUメーターが振れています。

8-3. Linx Mixerによる自在なサラウンドスピーカーの設定

Windowsの設定ではサラウンドバックがデフォルト(RL,RR)になっています。サラウンドチャンネルはLynx Mixerでサイドスピーカーにもルーティングできます。当シアターではサラウンドスピーカーはJBL8340Aで、サイドが左右3本で計6本、バックが左右1本で計2本設置しています。この全て、計8本にサラウンド音源をルーティングすると、より密度の高い音場が形成されます。

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上のショットはサラウンドバックの信号をサラウンドサイドにも割り当てた様子。サラウンドの信号Play 05+06をOut2L,Out2R(サラウンドサイド)とOut4L, Out4R(サラウンドバック)にルーティングしています。サラウンドサイドのレベルは若干絞っています。ルーティングとレベル調整は難しくありません。

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また設定を全て保存し、違うパターンを呼び出して使うといった事も可能です。上のファイルはミキサーのルーティングとそれぞれのチャンネルのレベルを変えたLynx mixerの設定LMSファイルです。呼び出すと保存時のミキサー設定が再現されます。とても便利です。

8-4. マルチチャンネルオーディオでのサラウンドスピーカの配置と性能

以前はマルチアンプドライブのJBL4343を5本設置して、映画のマルチチャンネルを再生していた時期もあります。シアタールームは床面性50平方メートル、容積250立方メートルです。サラウンドスピーカーも4343という大掛かりなサラウンドでしたが、これは音量を絞っても聴き疲れします。更にこの数では音場が希薄です。4343クラスで7本でどうかという感じです。バランスが肝心ですが、性能的に良いことと心地よさは別のように思います。

現在は床上270センチにJBL8340Aを8本設置していますが (フロントハイトを入れると計10本)、映画ではとても良い環境です。対してオーディオ用のマルチ音源では設置位置が高すぎるかもしれません。レコーディングの条件とは若干異なると思われますが、結果としての音場は十分な品質に思えます。性能的には再生帯域が45 Hz から 18 kHz と劇場用に若干高域が落ちていますが、そもそもサラウンド側に高域側のそれほどの伸びが必要とも思われず、また数による音場の濃密さの方が心地よさが増すように思います。

JBL 8340Aの記事へのリンク

9. PCオーディオシステムブロックダイアグラム

ここで使用したオーディオシステムは以下のような構成です。シアターシステムの一部を流用したフルデジタルシステムです。3つのフロントスピーカーは全てトライアンプ駆動で、dbx DriveRack4800がAES入出力のデジタルチャンネルデバイダーとして機能しています。AES16e-SRCの出力はデジタルチャンネルデバイダーへ直接入れていることになります。マスタークロックは10MHzルビジウム発振機を使っています。ユニットや部屋の音響特性はSmaartで測定し、DriveRack4800でイコライジングしています。

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iCLOCK : Rubidium Redundant Reference Audio Maser Clock
10MHz ルビジウム発振器
Rubidium Frequency Standard: LPRORB-02

 10. ネットワークデータを利用したPCオーディオ

ネットワークドライブを利用したPCオーディオについて触れてみます。前のブロックダイアグラムにも示していますが、Qnap TS-439 Pro2をデータドライブにしています。これは非常に高速で、感覚的には内蔵ドライブと変わらない速度で反応します。Atom D410 1.66GHz のCPUと1GB DDRII RAMを実装しiSCSIターゲットをもサポートした4ベイNASキットです。容量8テラバイトをRAID6に設定しています。

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Qnap TS-439 ProII (part1:転送速度のベンチマーク)の記事へのリンク

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    Qnap RAID6の転送速度                 UDT2010 内蔵SSD RAID0のベンチマーク

CrystalDiskMark3(1000MB)のベンチマークの結果です。左がQnapの転送速度、右が内蔵SSD RAID0でのベンチマークです。Qnapは従来のネットワークドライブの5倍ほどの転送速度です。

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UDT2010のリソースモニター                 Qnapのリソースモニター

左はネットワーク上のQnapに保存しているFLAC5.1ch音源を再生しているPCの画面です。リソースモニターとLynx Mixer, foobarを同時に示しています。CPU使用率は6%前後で推移します。ネットワークI/Oは6Mbpsで1Gbpsの帯域に対しては0%となっています。なおこの時のQnap側のリソースモニターではCPU(Atom D410 1.66GHz )使用率は10%をはるか下回っています。このFLAC5.1ch音源のネットワークストリーミングに対して、ハードウエアは十分すぎる余裕を持っています。

 11. オーディオとしての音質

機器設定後のファーストインプレッションです。Nordic SoundのFLAC 96kHz 5.1chの再生は驚異的です。同じ楽曲でもdual wire AESで聴く2ch収録とは似て非なるもので印象が随分違います。音場は広大かつ緻密で楽器や肉声の現実感は秀逸です。さりげなく鳴るセンターが定位を不動のものにしています。5mの幅にL,C,Rのフロントスピーカーを設置していますが、その間あるいは前後上下に3Dのように音源が特定できます。外側、上空、後ろから残響や余韻が伝わってきます。そこまではblu-ray HDMI HD audioでも経験しますが、現場にいるようなリアリティー、空気感はオーディオ再生のようなバーチャルなシーンではあまり経験できないものです。

絹のような肌触りの聴き疲れしない音質はルビジウムの特徴です。Lynxはナチュラルで癖のない音質が特徴ですが、全帯域にわったて芯もありキレもよくその良さが強調されています。ネットワークストリーミングでも質的な変化は感じません。この記事を書きながら通算10時間以上リプレイでかけっぱなしにしていますが、まだ聴き足りないほどです。

オーディオをやっていると良くなったと感じることがある反面、すぐに慣れてそれが当たり前の事になり感動が薄れてゆきます。しかし劇的な場面に遭遇する事はそう多くはありません。今回は数年に一度経験するかどうかというくらいのインパクトです。システム的にはマスタリング環境と同等なので当然と言えばそうなのかもしれません。機器のトータルバランスと思いますが、今後音源をネット購入しながらじっくり聞き込んで再度記事を掲載してみます。

12. 最後に

1Uラックマウント型自作ケースに組み込んだLynx AES16e-SRCで、フルデジタルの環境を構成し、高音質マルチチャンネル音源を再生してみました。そのパフォーマンスはすばらしく往年のピュアオーディオの血が騒いだというのが実感です。

これで3作にわたったUDT2010の連載記事は終了です。長くなったのでここで一旦終りにしますが、UDT2010のAES16eはblu-rayのHD audioをAESデジタル出力することも可能です。例えばDolby TrueHDの8chチャンネルを全てを個別にAESデジタルアウトで取り出すことができます。この場合もDACまでフルデジタルになります。機会があればこの点にも触れてみます。

今回のシステムではUDT2010は音源であると同時に、DriveRackによるクロスオーバー変更やチャンネルアサイン、音響調整、全てのPower ampのレベル調整などLANを介して主要なデバイスを制御する機能を備えているのもひとつの特徴です。

ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございました。プロオーディオ機器をアマチュアが扱った例はあまりないので、設定などは資料を読み込みながら手探りでトライしています。できるだけ客観性や正確性を心がけていますが、誤った表記や解釈などあるやもしれません。ご意見ご指摘などあればお気軽にどうぞ。 


この記事は2010-08-26に更新しています。初稿に加えた重要な変更箇所は赤で記載。

2 Comments

    古屋 成和 さん
    プラグのピン側が細い場合は、先端の小さい半田ごてを使うと容易に作業できます。ハンダは音質などにこだわりがあるのなら、オーディオ店でそれなりのものが購入できますが、通常のDIYショップのものでも可能です。融点の低いものが素人向きで作業がはかどります。ソケット、線材共に何かに固定すると楽に作業できます。ちなみにケーブル作りのページにその様子を掲載しています。
    アナログバランスケーブルの自作 http://monolith-theater.net/hal/?p=5380
    ショートや断線がないかどうか、カードをインストールする前に調べる必要があります。このさい、適当な力でケーブルに負荷をかけてみて、不具合がないかどうか、テスターを見ながら確認すると確実です。ご存知かと思いますが、LynxL22のピンアサインはメーカーのホームページに掲載されています。
    http://www.lynxstudio.com/product_detail.asp?i=11 の右のuser manualに記載されています

  • Lynx L22を使用しています。自作でケーブルを作ろうと思っていますがなかなか資料がなくできずにいました。2ch用自作ブレイクアウトケーブルを拝見し、詳細を教えていただけば私でも可能かなと思えてきますので、製作する上での具体的なこと、注意すべきことをお教えください。よろしくお願いします。

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