Onkyo PR-SC5508のHTPC互換性
Compatibility of Onkyo PR-SC5508 |
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Summary | ||||
Onkyo PR-SC5508, compatible with Windows 7, 9.2-channel A/V Preamplifier unveiled. In this article, the compatibility for HD audio pass through of blu-ray2D and 3D over HDMI from AMD Radeon, NVIDIA Geforce and Intel HD graphics was verified. PR-SC5508 worked perfectly in this trial. |
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Key features | ||||
1. Onkyo PR-SC5508 (firmware 1051-0400-0310-2101) was verified about compatibility of HD audio pass through form HTPC(Win7) over HDMI. |
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Onkyo PR-SC5508のHTPC互換性
INDEX 1.はじめに (Introduction) |
1.はじめに
新発売のHDMI1.4aに対応したセパレート型AVアンプOnkyo PR-SC5508を使って、複数のHTPCからのブルーレイHDオーディオパススルー出力の認識を検討してみました。NVIDIA GTX460, GTX480, AMD Radeon HD6870, HD5870, Intel Core i7 2600との互換性を検証しています。3DではNVIDIA 3D VISIONのフルHD、720pDLP stereoscopic 3Dに関しても検討しています。再生ソフトウエアはPowerDVDとTotalMedia Theaterです。以下ではパススルーとビットストリームは同義語として使っています。
2.整備されてきた ロスレス音声のパススルー環境
2-1. ロスレス音声のパススルー出力の問題点
ブルーレイタイトルにはDolby TruHDやDTS-HD Master Audioなどの高音質のロスレス音声が収録されています。自作PCをブルーレイプレーヤーとしてセットアップしてロスレス音声をHDMIでパススルー出力する場合、パーツとAVアンプとの相性問題が発生する事が少なくありません。これはAVアンプのEDIDをPC側が正常に認識できない事によるものが大半です。また再生ソフトウエアが対応していない場合、PCパーツそのものやドライバが対応していない場合にも起こります。
2-2. HTPCでのパススルー出力が可能な必要条件(≠十分条件)
1. OSの種類 (Windows7, vista)およびその適切なセッティング
2. 再生ソフトウエア(PowerDVD, TotalMedia Theater, WinDVD等)およびその適切なセッティング
3. サウンドカード (ASUS Xonar HDAV1.3, Auzentech X-Fi HomeTheater HD)
4. ビデオカード (AMD Radeon HD5xxx、HD6xxx以降, NVIDIA Geforce GTX460等)
5. インテルGPU統合型CPU (Clarkdale:Intel Corei5,i3, Sandy Bridge:Intel Graphics 2000,3000 を内蔵したCore i5, i7など)
6. 出力パーツが認識可能なAVアンプ (Window7 認証AVアンプ:Integra, Onkyo, Marantzなど)
上記の必要条件を満たしている場合、ビットストリーム出力できる可能性が高くなります。しかしその組み合わせは膨大でかつ情報は極めて少なく、問題が起こってもその原因を確定し解決するのは容易ではありません。PC側に原因があるのかAVアンプの互換性の問題なのかは経験則あるいは他のwebsiteで公開されている限られた情報を頼りに推測せざるを得ないのが現状です。メーカーの対応時期もまちまちなので、検証時点での対応状況によって結果は異なります。そのため当ブログでは、関連パーツやソフトウエアが対応した時点で、実機で確認しえた確実な情報や参照サイトを多数紹介してきました。(末尾の7.関連記事参照)
2-3. 整備されてきたパススルー出力環境
2010年後半から2011年になり考え方がシンプルになってきました。PC関連各メーカーがHD オーディオのパススルーの必要性を認識し、重要な機能として実装する事が多くなってきたからです。
従来品質の高い音声の出力にはサウンドカードを用いるのが一般的でしたが、最近ではビデオカードやCPUにその機能が内蔵されています。特にブルーレイのロスレス音声のビットストリーム出力では、3Dも含めた映像も同時に出力できるので、もはやこちらのほうが合理的です。音質も問題ありません。ロスレス音声の出力用としてサウンドカードが必要なケースは少ないかもしれません。現時点で最新の主要なVGAおよびIntelのGPU統合型CPUであるClarkdaleやSandyBridgeはロスレス出力に対応しています。
また再生ソフトウエアの対応も進み、PowerDVDやTotalMedia Theater,WinDVDなどではロスレス音声のビットストリーム出力に対応している事が重要な機能になりつつあります。残るは家電分野のAVアンプです。しかしこれもWindows7認証を得ていればほぼ間違いなく機能します。家電もPCとの親和性を重視しないといけない時代になったという事でしょうか。
今回はPCと家電の連携に実績のあるOnkyoのハイエンドセパレートAVアンプPR-SC5508を使って、様々なセットアップを施したPCとの互換性を検証してみました。
3.Onkyo PR-SC5508
PR-SC5508は昨年末に発売されたHDMI1.4対応のAVプリアンプです。9.2chのバランスアナログ出力を持っているのが特徴です。更にUSBやネットワーク再生などにも対応しています。
今回の検証に利用したOnkyo PR-SC5508。HDMI1.4対応AVプリアンプ。
firmwareは現時点で最新の1051-0400-0310-2101を使用しています。
3-1. HDMI1.4a 3D対応AVプリアンプ
当シアターの音響系はプロオーディオ仕様で、バランスラインがアナログ系のインフラになっています。従ってロスレスコーデックのデコーダーとしてはバランス出力を装備したAVプリアンプが必須です。しかしその選択肢は少なく旧来のHDMI1.3ではDenon AVP-A1HD, Integra DHC80.1, Marantz AV8003などが国内で入手できる製品でした。これらのうちAVP-A1HDとDHC80.1は当シアターでも現役で活躍中です。AV8003は実機に触れレポートを掲載しています。
●Marantz AV8003 http://monolith-theater.net/hal/?p=1083
●Monolith TheaterのAVsystem diagram http://monolith-theater.net/hal/?page_id=2#diagram
3Dディスプレイやプロジェクターの発売に呼応して、他社からも3D再生に対応するHDMI1.4の規格のAVアンプが発売されています。AVプリアンプではOnkyo PR-SC5508の他、Marantz AV7005、海外ではIntegra DHC80.2が利用可能です。Integra DHC80.2の内容はPR-SC5508と同様と思われます。Onkyoはコンシューマー、Integraはプロシューマー向けで、Integraはインストーラーがカスタマイズして利用する機種との位置づけです。これらは全て”Compatible with Windows7″です。AVプリアンプの最高峰Denon AVP-A1HDの後継機は開発中との事で、海外でも話題になっています。
●Onkyo PR-SC5508 http://www.jp.onkyo.com/audiovisual/avcenter/prsc5508/index.htm
●Integra DHC80.2(US) http://integrahometheater.com/model.cfm?m=DHC-80.2&class=Preamplifier&p=i
●Marantz AV7005 http://www.marantz.jp/ce/products/hometheater/avamp/av7005/index.html
●Official Denon AVP-A1HD/AVP-A1HDCI and POA-A1HD/POA-A1HDCI owners thread(AVS Forum) http://www.avsforum.com/avs-vb/showthread.php?t=1006957
3-2. DTS NeoX
また最近DTSが新たなサラウンド方式DTS NeoXを発表しています。PR-SC5508を含め現行機種でこれに対応したものはありません。AVアンプは最新の方式を盛り込むので、近い将来更にモデルチェンジする可能性もあります。しばらく様子見するほうが無難かもしれません。
●【CEATEC 2010】DTS、11.1chサラウンド「DTS Neo:X」を紹介-ケータイやTV/PCにもDTSの各技術を展開 (AV watch) http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20101008_399026.html
●11.1ch最新サラウンドシステム「DTS NeoX」体験 -「DTS」の音像表現に迫る(マイコミジャーナル) http://journal.mycom.co.jp/articles/2010/11/05/dtsneo/index.html
●新提案です(HiViweb) http://www.stereosound.co.jp/hivi/hvblog/topicskiji/2010101120462523/
PR-SC5508のリアパネル。端子の配置など外観はIntegra DHC80.1と全く同一。11のXLRバランスプリアウト出力を備える。
4.パススルー出力検証方法
Onkyo PR-SC5508を使ってHTPCとの互換性を検証してみました。HTPCからのHDMI出力がAVアンプで正しく認識されるかどうかを様々な組み合わせで検討しています。HTPCからの出力はブルーレイディスクから得られたデコード前のビットストリーム出力です。PR-SC5508でマルチチャンネルアナログ信号にデコードする事になります。
再生ソフトウエアはPowerDVDとTotalMedia Theaterの2つ、HTPCでの出力パーツは延べ7つ、それぞれに対して7種のソースをテストしているのでおよそ100回の試行を行っています。
機器構成の違いにより大きく3つのカテゴリーに分けて記載しています。ブルーレイ2D(Figure A)、フルHDのブルーレイ3D(Figure B)、720p DLPプロジェクターによるブルーレイ3D(Figure C)です。
4-1. ブルーレイ2D
ブルーレイ2Dの検証ダイアグラムです(Figure A)。5つのVGAでHDMIからのHD audioのパススルー出力がPR-SC5508で正しくデコードされるかどうか確認しています。再生ソフトウエアは最新のPowerDVD10(buld2429)とTotalMedia Theater5(build186)です。拡張デスクトップを利用してプライマリのDLA-HD750に映像出力しています。
ブルーレイテストディスクはsuperHiViCASTでDolby TruHD, DTS-HD Master audio, DTS-HD HR, LPCMで5.1~7.1chのビットストリーム音声をPCからPR-SC5508へ送り、アンプ本体のディスプレイ表示で確認しています。Onkyo,Integra系のアンプはHDMI出力が2つあり、mainとsubを利用した場合情報表示はsubにしか出力されません。上の図で言えばEIZOが情報表示専用にできるのでとても便利です。
ブルーレイベンチマークソフトウエアsuper HiViCAST: http://monolith-theater.net/hal/?p=3179
4-2. フルHDのブルーレイ3D
フルHDのブルーレイ3Dの場合です(Figure B)。テストディスクは”Cloudy with a chance of meatball” US盤を使っています。GTX460でNVIDIA 3D Visionを利用しています。メインの3D映像はデュアルリンクDVI接続のAcer GD245HQの映像を3D Visionグラスで鑑賞します。拡張デスクトップでPR-SC5508にパススルーを行っています。
●GTX460のロスレス音声HDMIビットストリーム出力(2D,3D/PowerDVD)(2010.10.13) http://monolith-theater.net/hal/?p=9822
4-3. 720p DLPプロジェクターによるブルーレイ3D
720pDLPプロジェクターを利用した場合です(Figure C)。NVIDIA 3D Visionを利用しています。GTX460からのHDMI出力をPR-SC5508に入力し、Acer H5360に出力を送っています。PR-SC5508はNVIDIA 3D Visionの120Hz信号も入力可能で、3D映像信号をパススルーできます。ただし右目と左目の映像が逆になります。PowerDVDやTotalMedia Theaterには右目と左目の信号を逆にするメニューがあるのでこれで対応しています。3DメガネをさかさまにしてもOKです。HDオーディオのパススルーは問題ありません。機会があればHDMI1.4対応の3Dディスプレイを使用してみる予定です。
●Acer H5360によるblu-ray 3D, 200インチ立体映像(2010.10.20) http://monolith-theater.net/hal/?p=10185
4-4. HTPCのパーツ構成
左: NVIDIA機 (GTX460, GTX480, Core i7 980X, ASUS Rampage III Extreme, 12GB RAM)
中:Intel機 (Core i7 2600, DH67CF, 4GB RAM)
右:Radeon機 (HD6870, HD5870, Core i7 870, ASUS Maximus III Extreme, 8GB RAM)
5. パススルー検証結果
Compatibility and Capability of PR-SC5508 in Blu-ray 2D and 3D
with built-in sound device of NVIDIA, AMD and Intel HD graphics
Blu-ray 2D FigureA | VGA | Motherboard | CPU | VGAdriver | display | HD audio pass through |
GTX460 | ASUS Rampage III Extreme | Core i7 980X | 266.58 | DLA-HD750 | Yes | |
GTX480 | No | |||||
HD6870 | ASUS Maximus III Extreme | Core i7 870 | 10.12a | Yes | ||
HD5870 | Yes | |||||
Intel HD Gr.2000 | Intel DH67CF | Core i7 2600 | 2226 | Yes | ||
Blu-ray 3D Fig.B, C | GTX460 (full HD3D) | ASUS Rampage III Extreme | Core i7 980X | Geforce266.58 | AcerGD245HQ | Yes |
GTX460 (DLP 3D) | 3DVision266.35β | AcerH5360 | Yes |
結果を表にまとめると上のようになります。 GTX480以外はHD音声のパススルーが可能です。GTX480はもともとパススルーできない仕様のVGAなので当然です。NVIDIAではGTX460(GF104)のみ, AMD RadeonではHD5xxx, HD6xxxなど最近のカードは全てパススルーに対応しているとされています。IntelのGPU統合CPUはClarkdaleの第一世代からSandy Bridgeの第二世代まで全てパススルーに対応しています。なおNVIDIAはβ、RadeonはhotfixなどIntelも含めてdriverはその時点の最も新しいものを使用するのが原則です。再生ソフトウエアも同様です。
全てのハードウエアの組み合わせで、ブルーレイ再生ソフトウエアとして使用したPowerDVD (buil2429), TotalMedia Theater(buid186)は2D、3D共に問題なく動作しています。
やや驚きだったのがPR-SC5508 がNVIDIA 3D VISIONの3D映像を受け付ける事です。そのまま3D DLPプロジェクターに映像をスルーできます。HDMI1.3の帯域内での120Hz 720p映像なので理論的には不可能ではないと予測していましたが、実際に出来てしまいます。また同時にHD audioのパススルーも可能です。さすがWindows7 compatibleです。PR-SC5508はPCの2D,3D入力に対して正しく反応しています。
6.最後に
PR-SC5508はPC入力に対してとても良好な互換性を持っているようです。リアパネルの入力端子にPC用の端子があるのもその自信の表れかもしれません。従来PCとAV機器は相性問題を抱える事が少なくありませんでした。しかし時代の流れか、PC側もAV機器側もお互いに互換性を保とうとしているように感じます。
機能はIntegra DHC-80.1と殆ど同じですが、反応が早くなっています。各種操作ボタンの表示の視認が容易で、操作感も良好です。Integraに対してOnkyoブランドの方が高級感があり、コンシューマーを対象にしているだけの事はあります。若干厚みのある音がします。HTPCにとってはとても良い周辺機器です。
検証風景
右上:Integra DHC-80.1, 下:Onkyo PR-SC5508,
左上:AVプリアンプスイッチャー (11ch,2:1) http://monolith-theater.net/hal/?p=6265
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この記事は2012-05-23に更新しています。初稿に加えた重要な変更箇所は赤で記載。