ブルーレイベンチマークソフトウエア
Blu-rayタイトルを再生するに当たって、AV機器の調整は重要です。特に自作PCでは、パーツのドライバーや再生ソフトウエアの設定が画質や音質に大きく影響しますが、組み込み時点で最良に設定できている事はほとんどありません。シアタールームやAV機器構成などでも大きく違うはずです。再生環境に合わせた最適な調整する事が目的のblu-rayソフトが市販されています。チェックディスク、レファレンスディスク等とも呼ばれますが、ここではそれらベンチマークディスクをいくつか紹介します。(写真はスクリーンに投影したものをデジタルカメラで撮影しています。スライドショー形式になっています)
1.Super HiVi Cast
1-1.映像イコライジング
1-2.HDオーディオチェック
2.Hi-Definition Reference Disc
2-1.ビデオパート
2-2.オーディオパート
3.FPD Benchmark Software
4.HD HQV Benchmark
5.使用感のまとめ
6.HTPCでの有用性
7.最後に
8.関連リンク
1.Super HiVi Cast
調整ディスクで最も使いやすいものの一つです。Stereo sound社が発売しているもので、同社のHiViというAV機器の雑誌が企画しています。HiViの2009年8月号から使用法に関する連載記事が掲載されています。過去DVD版のHiViCASTというディスクは長年調整用に愛用してきました。Super HiViCASTは内容に手を加えたブルーレイ版です。中央上は色合いと色の濃さを調整するときに使用するブルーフィルターです。 主要なメニューは以下のようになっています。
1-1.映像イコライジング
コントラスト、黒レベル、色合い、色の濃さ、シャープネスのチェック画面です。コントラストと黒レベルはとても重要です。とりあえずこの二つを調整するだけで見違えるような絵になることもあります。色合いと色の濃さはブルーフィルターを使用します。
1-2.HDオーディオチェック
以下の項目があります。
●デコードの種類と出力音声の確認
●スピーカー配置と音声チャンネル
●Dolby Digital Plus
●Dolby TrueHD
●DTS-HD HR and DTS-HD MA
●DTS Speaker Remapping Function
各信号の概説と、再生しているシステムがどの信号をどのようにしてデコードしているかを検証するプログラムです。ソフトウエアでハードウエアの仕様を診断します。たとえばDolby TrueHDプログラムでは、エンコードされたTrueHDがロスレス未対応のアンプを通すと「Dolby Digitalがデコードされています」とコアのみデコードされている事を、ロスレス対応のアンプだと「TrueHDをデコードしている」とのアナウンスがあります。特に自作機の場合、この6つのメニューを実行すればデコードに対する不安は解消します。プレーヤー側のprimaryとsecondary音声のミックス回路を検知できるプログラムは秀逸です。パワーユーザーでも、とても参考になるセクションです。
2.Hi-Definition Reference Disc
ポストプロダクション事業など音声映像のスタジオシステムを取り扱うキューテックのコンシューマー向けハイビジョンチェックディスクです。同様の内容でプロ向けのシリーズもラインアップしています。判りやすい日本語のガイダンスが流れるので初心者でも楽しめます。
2-1.ビデオパート
●Resolution
●Contrast
●Gradation
●Color Reproduction
●General Evaluation
●Test Signal
非常に内容のわかりやすいメニュー画面です。特に解像度のチェックに有用で、たとえばmonoscope画面が動いて動画解像度も評価できます。静止画では1080の解像度が得られても動画になると著しく解像度が落ちる事がよくわかります。実写での動画解像度の評価にあたっての注目点も解説されていて、非常に充実しています。自作PCでは演算能力を推測する事が出来て便利です。
2-2.オーディオパート
オリジナルの96kHz 24bit 7.1chのオーケストラによる楽曲が収録されています。同じ楽曲でLPCM, TrueHD, DTS-HD MAの3種類のフォーマットを選択でき、夫々のフォーマットの特性を肌で感じる事が出来ます。Channel checkでは7.1chスピーカー配置のコンフィグレーションが確認出来ます。
●channel check
●LPCM
●Dolby TrueHD
●dts-HD MasterAudio
3.FPD Benchmark Software
これはAVレビュー誌の2008年1月号の付録で非売品です。内容は上のHi Definition Reference Discと同じものが多く採用されています。キューテックと共同制作です。音声のチェックはなくビデオのチェックのみ収録しています。
●Resolution
●Contrast
●Gradation
●Color Reproduction
●Test Signal
4.HD HQV Benchmark
Silicon Optix社のHQVはAV機器の心臓部にI/P変換、スケーラー、NR処理などの技術として多く採用されています。このディスクでは、ノイズ処理、解像度、I/P変換、2―3プルダウン処理の各性能の精密な評価が可能です。HQVの仕様説明にも多くの時間が割かれています。ディスプレイのみを評価するときはソースを1080i、ノイズリダクションをオフに、プレーヤを評価するときには1080pでノイズリダクションを入れます。総合評価であれば現状のまま評価します。
ガイダンスが流れますが、記述を含め全て英語です。更にベンチマークスコアカードが添付されていて(写真右端)、5項目を100点満点で数値化できる本格的ベンチマークソフトウエアです。下のスライドショー中にスコア化の目安を記載しています。パワーユーザー向けで、プロが何を問題にしているのかがよくわかり勉強にもなります。映像のみの内容ですが、今回紹介した4つのディスクの中で最も客観的で緻密な評価です。
ベンチマークスコアの採点方法
●noise test (0-25 points)
25/ The level of noise is noticeably reduced without loss of detail
15 /The level of noise is reduced somewhat and detail is preserved
7 /The level of noise is reduced but detail is lost
0 /There is no apparent reduction in noise and/or image detail is significantly
reduced or artifacts are introduced
●video resolution loss test (0 or 20 points)
20/You can see fine horizontal black and white lines in the corner boxes
0 /The boxes in the corners strobe – half resolution processing
●jaggies test ,video reconstraction (0-20 points)
20 /All three bars have smooth edges at all times
10/ The top two bars have smooth edges, but the bottom bar does not
5 /Only the top bar has a smooth edge
0/ N one of the bars have smooth edges
●film resolution loss test (0 or 25 points)
25 /You can see fine horizontal black and white lines in the corner boxes
0 /The boxes in the corners strobe, or the edges of the boxes have vertical
bands – half resolution processing
●film resolution loss test-stadium (0 or 10 points)
10/ N o moiré pattern or flickering in the upper stands
0/ Moire pattern or flickering in the upper stands
評価値は連続量とチェックリスト形式の二つが混在しています。フルスコアは100点です。HTPCでは再生ソフトウエアやドライバーの設定の違いで、film resolution testで大きく差がつく事があります。
5.使用感のまとめ
■ Super HiVi Cast
最も気軽に使えて判りやすく、評価と共に調整の具体的方法が盛り込まれています。コントラスト、黒レベル、色合いと色の濃さが容易に調整でき、アマチュアには必要十分な内容。しかし静止画中心。サラウンド音響システム機能の自動診断を行ってくれる秀逸なプログラムが収録されています。知識が無くても使える初心者向きです。
■ Hi-Definition Reference Disc/FPD Benchmark Software
動画を含めた解像度が評価できます。調整方法は詳述されていません。多くの実写映像が収録されています。
■ HD HQV Benchmark
ノイズや解像度、動画の変換能力など極めて詳細な評価とそのスコア化もできますが調整方法には触れていません。動画の解像度のチャートは斜め方向の成分も評価できて便利です。高度な内容です。ビデオカードの2Dベンチマーク用として使われる事もあります。HQVの説明が入っています。自作PCのパーツやソフトの条件設定次第で大きくスコアが変動します。
■ その他:High Definition Benchmark BD Edition
海外のフォーラムなどで引用されるソフトです。
6.HTPCでの有用性
ベンチマークソフトは自作PCではとても役に立ちます。自作機はビデオカードやサウンドカードの設定を自分で行わなければなりません。それらのドライバソフトウエア、ブルーレイの再生ソフトウエアやOSにはサウンドとビデオに関するたくさんの設定項目がありますが、ブルーレイベンチマークで評価すると大きく調整を要する事も珍しくはありません。適切に調整すると見違えるようなパフォーマンスになる事もしばしばです。以下はよく行う調整です。
1.HiViCASTでコントラスト、黒レベル、色合い、色の濃さの調整。音声フォーマットのデコード仕様の確認。
2.HD HQV Benchmarkで動画解像度の調整。PowerDVDなどの再生ソフトウエアのインターレス解除の方式の選択やATI Catalystの関連項目の調整
3.頻繁に使う評価用映画タイトルを再生し、画質、音質の確認。
7.最後に
色や明るさの違い、ボケやにじみなど画質の違いは主観的な要素を排除できないので評価は簡単ではなく、また再現性も数値のようにはゆきません。PCの世界では速度やパフォーマンスを3D,HDDやゲーム専用ベンチマークスコアの数値で判断する事も少なくありませんが、画質や音質の違いは逆に数値以上に感覚が重要です。ブルーレイベンチマークスコアも目で観た感じを採点することになります。
ブルーレイベンチマークソフトウエアは、最初は時間がかかり面倒なので敬遠しがちですが、慣れると15分程度の短時間で評価と調整作業が出来ます。AV機器やPCを最良と思われる状態に調整する事が出来るので、気持ちよく観賞する事が出来ます。
8.関連リンク
super HiViCAST : JAN4571177050021 Stero Sound社、
Hi-Definition Reference Disc: JAN4988102453138 Qtec, Phile Web
HD HQV Benchmark: HQV(採点法とスコアカード), Phile Web
DVD版 HiViCAST (当サイトの記事 2005/2/13)
この記事は2009-10-23に更新しています。初稿に加えた重要な変更箇所は赤で記載。