PCケースの自作(2Uラックマウント型HTPC)
3mmフルアルミ製のラックマウント型HTPCケースを作ってみました。ブルーレイのフルスペック再生に特化したモデルですが、基本性能も高い自作機です。2Dブルーレイトランスポート自作機の最終到達点です。
このブログで紹介する自作ケースとしては3作目です。
1作目 自作PCケース(水冷対応ベンチ型)
2作目 自作PCケース(オーディオ型)
3作目 本作・自作PCケース(2Uラックマウント型)
4作目 自作PCケース(1Uラックマウント型) 2010.05.11公開
Index
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1. 設計コンセプト
2. 外観一覧
3. フロント開閉機構
4. 市販4UHTPCケースとの比較
5. 内部構成
6. パーツ制作工程
6-1. リアパネル
6-2. フロントパネル
6-3. 底板、ドライブベイとサイドパネル
7. ラックマウント
8. 仕様一覧
9. ベンチマーク
10. ブルーレイ再生パフォーマンス
11. 最後に
1. 設計コンセプト
Clarkdale プロセッサの登場で、ブルーレイ再生を目的としたPCではビデオカードやサウンドカードを必要としなくなりました。小型マザーボードと電源、光学ドライブ、更にSSDで構成すれば熱源も少なく非常にコンパクトなマシンに仕上がります。当シアターではラックマウント機器が多いので、2U(EIJ)規格で設計してみました。
2U(EIJ)規格ラックマウント型
3mmフルアルミ製で強剛性の筐体
ホームセンターで調達できる素材で構成
サンドブラスト、ヘアライン仕上げ
基本パーツは全て自作
薄型でスマートな外観
静音PC
ATX電源、microATX, SSD, 5インチ光学ドライブ,Win7 64bit
PCの内容はClarkdale for HTPC (hardware setting)、 Clarkdale for HTPC (HD audio bitstreaming)で紹介したものと同じです。
2. 外観一覧
3. フロント開閉機構
フロントパネルデザインと工作は苦労しました。ここだけで作業時間の半分を費やしています。デザインの統一性を考えるとパーツの色と質感が問題です。ドライブの金属色のものは市販されていないので、開閉機構を採用しました。内部構成も考慮しながら、左にブルーレイドライブ、右にSSDドライブベイを配置しています。
開閉ヒンジも試行錯誤しました。小型マグネットをつけた前面カバーパネル下部にステンレス製の棒を固定し、両サイドの枠に穴を開けて差し込む設計にしています。電源スイッチ、電源とHDDアクセスLEDは中央に配置。カバーパネル中央に穴を開け、閉じた状態でも操作、確認できるようにしています。
4. 市販4U, HTPCケースとの比較
過去長年愛用してきたフルサイズ市販HTPCケース、silverstone LC18との比較です。LC18は生産終了していますが、フルアルミの最高峰の一つです。しかし部材は1mmアルミで、3mmアルミの本作とは剛性が決定的に違います。容量も半分以下です。ここでは自作の木製19インチラックにマウントしています。
5. 内部構成
パーツを入れると中にあまり余裕はありません。というよりこの構成でケースを設計しています。先に大きなパーツの固定を考えます。平面配置なので楽なようですが、実際は高さをあわせてゆくので、緻密な一ミリ以下の空間精度が必要です。
幅はラックマウントEIJ規格で482.6mmと決まっています。奥行きは自由に設計できます。問題は高さです。今回EIJの2U、88.9mmとしたので、市販の薄型CPUクーラーでもぎりぎりです。マザーのスペーサーを調整して、ファンガードを含め天板はフルフラットになる高さに収めています。
設計上エアフローも重要な要素のひとつです。12cm静音CPUファンで吸気し、電源と6cmケースファンで排気。熱の篭りを防ぐため両サイドパネルに通気孔を設けています。
6. パーツ制作工程
パーツはホームセンターで購入した3mmアルミ板から切り出して制作しています。材料費は7000円程度です。大半電動工具で作業しますが、微調整や仕上げ研磨は手作業です。アルミは柔らかいので、基本的に木工工具が流用できます。ただし十分な切削オイルを使う事がポイントです。適切な仕様を選んでおけば、アルミでも歯先やビットが損傷する事もありません。慣れれば切断切削過程は、薄い分木工よりもかえって簡単です。
6-1. リアパネル
大きな開口部と細い縁をもつ部分は切断順序が重要です。
穴あけはドリルで開口部をつくり、ジグソーでくりぬき、最後にヤスリで仕上げます。
6-2. フロントパネル
フロント開閉パネルはステンレス丸棒を両サイドの穴に通すようにしています。
閉じたときの固定は小型強力磁石です。ドライブが出てくると自然にドアが倒れます。
ボルト固定はタップでネジをきっています。
LEDは5V仕様です。アルミ角棒を多用しています。
6-3. 底板とドライブベイ、サイドパネル
ドライブ固定部も結構精度が要求されます。フロントパネルにドライブを装着した状態をつくり、
それにあわせて底板に固定したドライブベイの固定ネジの位置決めを行います。
メンテが容易なようにタップでメスネジを切っています。
7. ラックマウント
前後のラック共に自作です。手前下に今回のケースをマウントしています。
8. 作品仕様一覧
Clarkdale for HTPC (hardware setting)、参照
企画製造元、ブランド | Monolith Craft , HTPC HAL series | |
型番 | AH55BDP-100208 (2Urack mount type) | |
材質 | 3mmアルミニウム筐体 (リア2mm) ヘアライン仕上げ | |
本体外寸 | 本体420×400x80mm, 前面パネル482.6×88.9×3(t) EIJ2U仕様 | |
ハードウエア仕様一覧 | ||
OS | Windows 7 Ultimate x64 | |
MB | ASUS Asus P7H55D-EVO (microATX) | |
CPU | Corei5 661 | |
IDE/SSD | Intel SSDSA2M0G2GC 80GB (AHCI mode) | |
Memory | memory: Corsair CMX4GX3MsA1600CB, 2GBx4. | |
PSU | Seasonic SS-350SFE/S | |
Blu-ray Drive | Pioneer BDR-S03J-BK | |
SSD dual bay | ANIEX Dual bay mobile rack | |
CPU cooler | Scythe Big Shuriken | |
ソフトウエア | ||
ブルーレイ再生 | WinDVDpro2010, Total Media Theater | |
HDMI HD オーディオビットストリーム出力(TrueHD, DTS-MA) | ||
1080p ハイビジョン再生 |
9. ベンチマーク
10. ブルーレイ再生パフォーマンス
Clarkdale for HTPC (HD audio bitstreaming)参照
映像も音声も市販機と変わらない素晴らしいパフォーマンスです。特にHD音声のビットストリームをDenon AVP-A1HDやIntegra DHC-80.1でデコードした出力はPioneer BDP-LX91と遜色ないか、音のキレや空気感で上回っているかもしれません。静音性も十分で、ラックマウントしてしまうと無音です。CPU温度はソフト読みで40度に達しません。
11. 最後に
今回、初のラックマウントタイプに挑戦してみました。前回のオーディオアンプ型に比べると難易度は低く、比較的短時間で完成しました。最も手間がかかったのはフロントパネルのギミックです。特にヒンジの部分の構造を考案するのに数日を要しています。
2Uに収めるには電源とCPUクーラーがポイントになります。今回電源は小型のATX, CPUクーラーは入手容易な薄型を使用しました。実は1U機(JIS)も既に制作済みです。次回は特殊仕様のパーツを使ったオーディオ再生専用機を公開してみます。 →2010.05.11公開 UDT2010: part1 (1Uラックマウント型PCケースの自作)
今回の作品は2Dブルーレイプレーヤー自作機の最終到達点と感じます。これ以上の品質、特にその音質は市販ハイエンド再生機でも凌駕するのが難しいかもしれません。振り返ってみればHDMI1.3というデジタル仕様の完成度が非常に高かったのかもしれません。
昨年9月からスタートしたClarkdale プロジェクトもこれで一応の終結です。一方、いまや家電業界はその先、3D仕様の開発をアナウンスし、フラットパネルは既に世に出ています。自作機で3Dが追えるのか?Sandy Bridgeの行方に注目です。
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この記事は2010-05-11に更新しています。初稿に加えた重要な変更箇所は赤で記載。