自作PCケース(オーディオ型)
オーディオアンプ型のフルアルミPCケースを自作してみました。Micro-ATXを使った比較的小型のデスクトップで、本体の大きなフロントディスプレイパネルとメカニカルなリモコン装置が特徴です。上品なアルミのサンドブラスト処理に加えヒノキのサイドウッドと、スマートでエレガントなフィニッシュを目指しました。
電源スイッチやUSBポートを備えた有線リモコンで本体を操作します。大型のディスプレイパネルの中に2つの小型のLCDディスプレイを備え、本体内部の控えめのLEDギミックが見通せます。性能的にはWindows7 x64 Quad coreの最先端機です。
1.設計コンセプト
2.本体写真一覧
3.リモコン
4.作品仕様
5.素材と加工
6.本体工作
7.本体ディスプレイパネルの動作
8.オリジナル起動画面
9.最後に
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自作PCケース
HTPC v.911
PCケースの自作(2Uラックマウント型HTPC) 2010.3.12リンクを追加
UDT2010: part1 (1Uラックマウント型PCケースの自作) 2010.0511リンクを追加
1.設計コンセプト
自作フルアルミでコンパクトな強度のある筐体
オーディオアンプ風の高級感のあるデスクトップ
控えめのLEDギミック
本体は表示部を確認するだけで、本体に関する主要な操作をリモコンで行える事
メインテナンス性に優れる
冷却性を高め、耐久性に優れる
PC初心者が職場で仕事用として使用することが前提(人の目にふれる)
Windows7 x64, オフィス系のソフトはフリーのOpen office,
DVDドライブはUSB外付けで対応
机を離れたときには洒落たスクリーンセーバー
2.本体写真一覧
サイドウッドを取り外して使う事も出来ます。ウッドがないとハードウエアとしての印象が強く、やや硬質な感じに仕上がります。外観はHTPCケースです。
3.リモコン
リモコンです。機能的にはPC電源スイッチに加え、パワーLED,アクセスLED,2つのUSBポートとスイッチ付きデスクライトを備えています。ステンのハンドル以外は自作品です。ベースは10mm、トップは3mmアルミ、発光部は5mmアクリルの2枚重ねです。ロゴプレートはレーザー焼付け加工です。穴あけは正確性と垂直性が要求される事が多いため、ボール盤を使用しています。
アクリル発光部 →WMV形式の動画です accessLED sleepLED
アクリル発光部下段はパワーモニターLED(ブルー), 上段はIDE アクセスLED(レッド)です。電源のブルーLEDはスリープ状態になると点滅しますが、ゆっくりと明滅する残光仕様にしています。アクリルの仕上げは時間をかけています。200番から400番台のサンダーをかけながら、透明感を失わないクリスタルな輝きを演出したつもりです。
スイッチとUSBポート
赤いボタンはパワースイッチ、左はマザーのヘッダーピンから直接延長した2つのUSBポートです。標準でUSBデスクライトを装着する仕様にしていますが、中央ポートがライト用で、強度補強のため両側にアルミブロックを立てています。右上にこのUSBポートの電源スイッチを設けていて、ライトの点灯スイッチとして機能します。
コードの自作と配線
結構細かい作業です。USBコードは市販の3mを2ポート分切り取り、マザー側はピンプラグと、リモコン側はUSBソケットに半田付けしています。USBソケットはマザーに付属の増設用のものを分解してパネルに取り付けています。USB電源スイッチはUSB電源ラインに直列に入れています。電源SW、電源LED, アクセスLEDラインは8芯シールドマイクケーブルの流用です。
LED
赤と青のLEDはパーツ屋さんからバラで購入した汎用品です。ラインの電源は5VなのでLEDの入力電圧仕様に合わせて直列に抵抗を入れます。汎用品のLEDは非常に安価ですが、LEDの色によって電圧が違うので挿入する抵抗値も異なります。しかし150Ω以上を入れておけばほぼ同じ輝度で光ります。
パワーLEDは残光仕様にするために、並列に1000μFのコンデンサーを入れています。これは古いマザーのコンデンサーから取った流用パーツです。いくつかコンデンサーを試してみて好みの残光を示す容量を決めます。2,3個あれば並列足し算になるので適切な容量を探るのは難しくありません。
ケーブル処理
ここは耐久性が要求される部分です。網目状のケーブルカバーで覆い、自己融着テープで止めた後、フェライトのノイズフィルターで強固に固定しています。ケーブルの出入り口はリモコン、本体側共にケーブルグランドのスーパーロックを使っています。
4.作品仕様
企画製造元、ブランド | Monolith Theater , HTPC HAL series | |
型番 | AAWP55-YUKO | |
材質 | 3mmアルミニウム筐体、檜サイドウッドパネル(脱着可)、アクリルフロントディスプレイパネル、 | |
付属品 | USB2ポート付きリモートコントローラ(本体電源、USB電源スイッチ付LEDデスクライト付属)USB外付けDVDドライブ | |
フロントディスプレイ1 | 1.5inch USBフォトフレーム。標準でPC主要諸元を表示。 好みの画像をスライドショー形式で表示可能。 | |
フロントディスプレイ2 | 4.3inch USBサブモニター。デジアナクロックスクリーンセーバー標準添付。拡張デスクトップやクローン画面などあなたのアイデア次第で使い方色々。 | |
本体外寸 | 400×300x130mm | |
主要パーツ一覧 | ||
OS | Windows 7 Ultimate x64 | |
MB | ASUS MAXIMUS III GENE (Intel P55,MicroATX) | |
CPU | Corei7 860 (1156 Quad core) | |
IDE/SSD | OCZ Vertex Turbo SSD 30GBx2 RAID 0 | |
Memory | Patriot DDR3 ViperII Sector5 PC3-10666-1333MHz 2GBx2 | |
Power | AS Power S-600ED | |
VGA | Sapphire Radeon HD4550(LP fanless) | |
1.5inch LCD | KEIAN KDPDK15-BK:128×128px | |
4.3inch LCD | Century plus one(LCD-4300U):800×480px | |
SSD dual bay | ANIEX Dual bay mobile rack | |
CPU cooler | Scythe Shuriken revB | |
Rear case fan | SNE 6cm 13dB 2300rpm 0.1A :GERMAN6-13DB x2 |
5.素材と加工
アルミ
3mm厚のフルアルミ製です。ホームセンター購入、採寸し電動マルノコとジグソーで切り出します。断端は電動トリマーや電動オービタルサンダーで処理し、直線性や丸みを出しています。穴あけは電動ドリルドライバー。フロントとサイドのねじ切りは2から4mmのタップで、該当のネジはステンレス製のM2からM4までの皿ネジを多用しています。皿ネジの面取りは6mm専用ビットを使用しています。アンダーパネルはM3鍋ネジでナット止め、リアは鍋ネジでメスネジを切っていますです。仕上げは200番台の布やすりをつけたオービタルサンダーで磨き、液性の研磨剤入り金属クリーナーで処理した後、揮発性のペイント希釈剤で洗浄しています。やや光沢のあるサンドブラスト風に仕上がっています。
フロントパネルにはロゴプレートを付けています。これも3mmアルミですが、通販サイトに原稿と素材を送り、レーザー焼付けで文字を刻んでもらいました。表面は120番オービタルサンダーで大まかな傷を入れた後、240番で軽く磨き、フロントパネルと質感の違いを出しています。
アクリル
前面ディスプレイパネルは5mm透明アクリルと3mmスモークアクリルの張り合わせです。おおむねネジ止めですが、融着接合している部分もあります。LCDディスプレイはグレイのスモークアクリルを通してみる事になりますが、コントラストが際立って非常に綺麗な画像です。リモコンの発光部も5mm透明アクリルです。これもホームセンターで購入し、電動マルノコで切り出し、断端は400番台の布やすりで磨いています。
木材
サイドパネルはヒノキの集成材です。最近、檜や桐の集成材をよく見かけます。檜は比較的軽量で加工性も良く強度も適当で木目が綺麗なのが特徴です。手持ちの端材ですが、マルノコで切り出した後、トリマーで面取りし、オービタルサンダーで磨いています。80番台から120,240,400番のサンドペーパーで順次処理した後、2液性のウレタン透明ニスを塗り、更に400番で磨いた後、3日ががりで3度塗りしています。かなり分厚い透明感のある塗膜に仕上がっています。
電動工具
マルノコ、ジグソー、ボール盤、トリマー、オービタルサンダー、ブロアー、ドリルドライバー
材料費:アルミ、アクリルなど約12000円(ケースのみ)
6.本体工作
パーツと底板
底板の大きさはマザーと電源、高さはCPUファンと電源の大きさで決めています。PCとしての安定性と耐久性を考慮して比較的大きな電源を選んでいます。底板には通風孔をふたつを開けています。位置的にはSSDとマザーの下になります。マザーの固定には3mmネジが切ってあるスペーサーを使用。電源固定用のL字アングルと共に底板にボルトナット固定しています。
SSDはANIEXの2.5inch dual beyにセットし、アルミのホルダーを作って底板に固定。小型のCPUファンを付けたマザーにロープロファイルのVGAをセットすると、ケースの中はほぼ満杯の状態です。エアフローはリアパネルdualの6cmファンが吸気で、電源12cmファンで排気。余剰のエアはパッシブに底板の排気孔から抜けてゆきます。
サイドパネル
サイドパネルは底板に合わせて採寸し、隣接するパネルと結合するためのL字アングルをつけています。サイドウッドはタッピングで固定。フロントパネルが2mm食い込む溝をルーターで掘っています。分厚い塗膜で光沢も十分な仕上がりです。
フロント・リアパネル
フロントとリアパネルは手間がかかっています。フロントはディスプレイ部は単純な切抜きですが、ジグソーで大まかに切った後、トリマーで直線研磨しています。リアパネルはあまりに加工が複雑なため、1mmアルミをジグソーで加工しています。VGAの固定部はリアパネルの該当箇所の折り曲げと穴あけで対応。
フロントディスプレイ
フロントパネルのディスプレイ部は5mmクリアの裏に3mmグレイスモークのアクリルの張り合わせ、その裏に1.5inchLCDと4.3inchLCDをボルトナットで押さえつけて固定しています。上下の枠は専用接着剤での融着接合です。クリアのアクリルは、表のアルミパネルより2mm出る事になりますが、角は手作業のヤスリがけで面取し、素材のクリア感を強調しています。フロントに出る皿ボルトの面取りは、面取り専用6mmビットをドリルドライバーに装着した手彫りです。
天板・リアパネル
天板は乗せてネジを締めれば固定できるように サイドパネルとリアパネルに取り付けたL字アングルにタップでメスネジを切っています。やはりボルトを埋め込む面取りをしています。リアパネルの固定も全てメスネジを切っていますが、ここは鍋ネジを使っています。I/OポートパネルはASUS純正で、6cmファンにはファンガードとシリコン緩衝シートを入れています。リモコンラインはスーパーロックで固定しています。
7.本体ディスプレイパネルの動作
動作時のディスプレイパネルの近接写真です。奥の青、赤、緑のLEDがグレースモークアクリルを通してほんのり光っています。左の1.5インチLCDはKEIANのフォトフレームで、構成するパーツの概要を示すスライドショーにしています。これはUSB給電なので、本体主電源を切らないと消灯しません。右はCenturyの4.3インチUSB拡張LCDディスプレイで、デフォルトではデジタル時計として設定しています。パタパタとめくれるシックなデジアナ時計スクリーンセーバーです。もちろん拡張デスクトップとして、動画や写真のスライドショーを流す事も出来ます。Win7の壁紙もとても綺麗です。二つのUSBラインはマザーのソケットから直接とっています。
1.5インチLCDのスライドショー画像。表示秒数設定や循環・終了設定もできます。デフォルトでは一番目と最後の表示が長い循環スライドショーになっています。(128x128px, bmp)
8.オリジナル起動画面
起動画面もオリジナルロゴを挿入してハックしてみました。Biosの立ち上がる間に現れる映像です。
9.最後に
今のところ自作PCで一番楽しめるのはケースの自作です。その際、最も重要なのは揺ぎない設計コンセプトです。制作期間中、ケースの事で頭が一杯になります。暇さえあればうつろな目で天空を見つめ、頭の中で設計しているので、最近は3次元パースが夢の中で回転しています^^;;木工工作も数をこなしていますが、金工工作は危険度も高く、取り掛かる前の緊張感が違います。
この作品は出来がいいほうです。やり直しが何回かありましたが、割とスムーズに完成までたどり着きました。それでも約2週間かかっています。でも同じ事で2週間も楽しめるのはなんとも幸せです。特に多種の素材(ここではアルミ、アクリル、木工:AAW型番の由来)を扱うと、作業中気分転換できてとても楽しめます。完成してしまうと執着も半減、次の日には別の工作を計画しています。
まだあと数作品、稼動している未発表自作PCケースがあるので、順次掲載する予定です。
この記事は2010-05-11に更新しています。初稿に加えた重要な変更箇所は赤で記載。
Shuttleさん お久しぶりです。HDAV1.3の調子はどうでしょうか。
自作ケースは手間がかかりますが、オリジナルの発想が形になってゆくのは格別です。
メーカー品は精度が高く、コストパフォーマンスも真似できませんが、確かに趣味性の高いものは少ないですね。
こうやって励まされながらも、コツコツ作ってゆこうと思います(駄作もありますが…..)
コメントほんとに有難うございました。
ご無沙汰しております。
素晴らしいの一言につきます。
HAL様には遠く及びませんが、構築したり、考えてたりする時間は映画をみるよりも楽しかったりします。
現在使っているケースではやはり妥協しているところがあるのですが
自作ケース素敵です。
メーカーさんにも頑張って欲しいです。特に国産。
じろうさん、コメントありがとうございます。
う~ん、ここはちょとマニアックすぎるのでコメントも難しいのかもしれません。じろうさんのコメントがとても励みになります。写真も良かったですか!時間かけたかいがありました。ありがと~。
オリジナルケース、機会があったら是非挑戦してみてください。なにか1つ作ると次のアイデアが沸いてくると思います。あ、壁に埋め込むのは以前私も考えた事があります。そのころはキーボードやマウスも無線が一般的でなかったのであきらめましたが、今はディスプレイも無線化出来そうなので、もしかしたら洒落たのが出来るかもですネ。自作は何でもありです・・・
おかげで気分も盛り上がってきたので、次回の記事は自作ケースにします。未発表大型で、ピュアオーディオ一体型です。今週中にもアップしてみます。
どもです、じろうです。
コメント頂いてたんですね、ありがとうございます!
この作品、誰からのコメントも無いようだったので、自分としては呼び水になればなぁ・・・と(笑)
ケースマニアにとって、これはアートの域に達してると思います(ホント)。
撮影の光と影の使い方も痺れます(笑)。
自分も新作ケースが発表される度、ネット上で確認するんですが、
「ふぅ~ん」で終わってしまうんですよね・・・どれも同じで(それかセンス悪すぎ)。
CPUやGPUは、結局ただただ速いだけ。
ケースの場合、使って、触って、置いてみないと分からない魅力があるので、自分の我慢力との戦いです。
自分には金属を削る技術が無いんですが、もしオリジナルケースを作るとしたら・・・、
部屋の壁や床に穴を開けて、その中に隠そうかと・・・。
俺ってPCケース大好きなハズなのに、壁に埋め込む???
ん??? 家全体がケースってコト?
じろうさん こんにちは。
うれしいです。自作ケース記事は掲載して以来とんと反応がなく、さびしい思いをしてましたが。
そうなんです。持ち物として目に触れるのはケースなので、これをなんとかしたいと常々思ってました。既製品は魅力的なものが非常に少ないです。
自作PCというだけでも知らない人にとっては珍しく驚かれますが、中身のパーツは理解されません。存在感のあるケースは誰にでもインパクトがあるようで、友人にも好評です。家族や子供にもスゴーイといってもらえて悦に入ってます(←タンジュン)。
>一昔前のSF感が良いですね(特にリモコンが)…..狙ってました。最大級の賛辞です。ほんとにほんとにありがと~~。
はじめまして。
夢があるなぁ(笑)。
パソコン内部、最新パーツで揃えても半年経ったらミドルクラスですもんね。
自分もケースにはお金を掛けたくなります(それとスピーカー・・・とキーボード&マウスも)。
自分には技術が無いんですが、友人がこのページにインスパイアされてました。
一昔前のSF感が良いですね(特にリモコンが)。