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Esoteric UX-3 vs DVD-PC1       esotericロゴ
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 自作PCでDVD再生専用機を作ってきましたが、自宅での市販品との比較は久しぶりです。DVD再生高級機の一つである、Esoteric UX-3を自宅で視聴する機会を得ました。はたして自作機と比較してどうか?自分としては、ワクワクドキドキの体験です。

 自作の「DVD-PC1」は、最新の市販高級機の画質や音質を凌駕することを目標に工作してきました。少なくとも50万、できれば100万超の再生機が目標です。UX-3は希望小売価格73.5000円なので、比較対象としては最適です。

 自作機工作過程での品質の比較基準は、店頭市販品や劇場での視聴で培ったものです。画質の基準は、市販再生機や映画館の画質、音質の基準は趣味としてのオーディオの経験、店頭での視聴、知人宅のシステムや最新の劇場システムなどです。しかし、同時比較視聴が最も客観的です。このような機会を与えて下さったKさんに感謝します。


このページの内容

1.Esoteric UX-3 製品概要
2.画質音質比較 Open Trial, & Double Blind Test (二重盲検法)05.04.13
3.ワードシンク 05.04.05
4.RadeonX850XT, Geforce 6800 ultra と Esoteric UX-3との比較記事
 1.Esoteric UX-3 製品概要
Esoteric UX-3
Monolith Theaterのメンバーの一員となったEsoteric UX-3
Esoteric UX-3の特徴 (カタログから一部改変抜粋)

・超高精度ターンテーブルシステムVRDS-NEOメカニズム
・P-0の思想を発展させたピックアップ送りスレッドサーボセクション
・スピンドルモーター系とスレッド送り系の振動を分離
・高精度メカニズムとソフトウェアサーボにより強力なプレイアビリティを実現
・フロントパネルは肉厚のアルミ材とし、天板・側板は1.6mm厚スチール・ボンネット
・トレー部にはアルミ削り出し
・バーブラウン製24ビットD/Aコンバーター・PCM1704
・I/P変換用ICに
ファロージャ製チップ、DCDiテクノロジーによるプログレッシブ映像
・アナログデバイス社製の14bit/216MHzビデオDAC・ADV7314を採用
・インターレス方式で16倍、プログレッシブ方式で8倍のオーバーサンプリングD/A変換。
・ノイズ成分を不要帯域にシフトさせて高S/Nを達成するNSV処理
 Esotericブランド品は、ずいぶん昔に購入した事がある。CDプレーヤーのP-1,DACのD-1だった。Esotericブランドの設立当初だったが、非常に堅牢な筐体で、重かった。値段以上の音質だったと記憶している。未だ処分せずに持っているが、もはや動作しない。P-0も一時聴いていた。これはアナログの儀式を髣髴とさせる、厳粛な雰囲気を持つ製品だった。

 ブランドの印象は非常に良い。オリジナリティーあふれる設計で、他社にはない高級機を出し続けている。特に筐体やメカニズムの設計に魅力を感じる。今回のEsoteric UX-3もVRDSという独特のメカニズムを持っている。これより下のクラスの製品も出しているが、やはりEsotericなら、このメカニズムを買う。
 2.画質音質比較

[視聴ディスク]


HiViCAST、Hometheater Reference、ファインディングニモ、Nuejahrskonzert2002、Celine, All the way, A Decade of Song & Video、イノセンス、STAR WARS 2、その他

[比較方法]

 視聴による機器の評価は、主観の世界だ。趣味だからそれはそれで良いと思う。技術的な測定データなどあまり興味はないし、第一理解できない。ユーザーとしては、技術的成果が自分の感覚に合えばそれで良い。しかし、思い込みや先入観があるのではないかと、何時も疑心暗鬼。自分の感覚に疑いを持つことも多い。そこで今回は他人の評価も参考にすることにした。前もって再生機器を特定できるOpen Trialと、特定できないBlind Trial。Blind Trialは、ある意味恐ろしい検査法だ。

 通常はBlind Trialなんて行わない。プロセスが面倒。ネットの検索でも、海外でいくつか存在するのみ。この種の客観手法は、AV機器に馴染まない、あるいは意味がないのかもしれない。趣味性が高いので、機器のブランドや所有している満足感、機器の技術的先進性、希少性、価格、雑誌や一般的な評価が高いかどうかが問題なのかもしれない。感覚的充足感を鋭利な刃物で切り刻む様な行為はいかがなものか? デモ面白そうだ。こういった評価法が意義があるのかどうかを含め、今回はちょっとした余興のつもりで行ってみた。

1. Open Trial

まずは通常の視聴評価を行う。自分で機器を設定し、自分で選んだソフトをプレイバックし、自分で評価する。Esotericはデフォルトの状態で音声はS/PDIF同軸接続。コードはサエク。DVD-PC1の音声はAES/EBU接続。コードは自作。詳細はこちら。
Esoteric UX-3 DVD-PC1
音質 いわゆる高級機の特徴である、S/N感の良さがある。中低域、特に低域の量感が豊か。高域はおとなしい印象。粛々と音を整理して聞かせてくれる。音像はふらつくこともなく定位はどっしりと安定。ボーカルの口の大きさなども過大にならない。音像の移動もあいまいさがない。サラウンドも綺麗な音。PCの再生に慣れた耳からすると、その安定感が印象的。高級CDプレーヤーを聞いているような、オーディオ的な音の出方。 Esotericの後に聴くと、バランスが中高域にある。中高域の密度が高く、人の声に生気がこもる。低域のレンジは十分出ているが、UX-3に比べると量感が少ない。躍動感を感じるが、これは中高域の特性によるものだと思う。音像はやや大きい。サラウンドの音数が若干多い。音像は前に出て、その移動感は太く速い。ホーンの特性を良く引き出している印象。
画質 以前から三管で、VP-250などファロージャ製単体ラインダブラーを使用していた。一見してファロージャと判る、特徴的なきめ細かな動画。ややアウトフォーカス気味に見えるが、これは動画の補間性能を考えるとお釣りが来る。階調表現は白、黒側ともに見事。色の再現性はあっさりとしているが、中間色の表現が良いと思う。これだけ観ると、文句のつけようがない。最高峰のDLP画像だ。昔のメーカーで表現すると、パイオニアかビクターの絵作りに似ている。 輝度のダイナミックレンジが大きい。Esotericと比較すると、やや白側がサチった印象があるが、HiViのレベルチェックではcontrast100,99,98をクリアしている。発色は良いが、比較するとすべての周波数帯にわたって明るい色に見える。静止画の解像感は、完全にEsotericを凌駕している。反面、動画の動きの速い領域で破綻する場面がある。ドラムの速いバチの動きに追いつけない場面があった。2D動画の補間性能はEsotericに分がある。相対的に澄んだ解像感の高い映像だ。昔のメーカーで表現するとソニーの絵作りに似ている。
特徴 優等生、安心感、整然、滑らか 元気、躍動感、透明感、解像感

総評:どちらも基本性能はハイレベル。キャラの差のレベル。甲乙つけがたい。あえて言えば、音声はDVD-PC1、画像はEsotericUX-3
感想:意外にも自作機が健闘した。動画処理はソフトのチューンかオーバークロックで追いつける可能性がある。自作機はチューンできる分、融通性がある。
参考画像05.04.13
 Esoteric UX-3 と DVD-PC1の画像を比較してみた。150インチスクリーンに映し出された映像を撮影したもの。こうやって比較すると、DVD-PC1のほうが、画質が良く見えるのが不思議。動画の中で捉える感覚と、静止画では異なる。動画を見ている分には、僅かな差ではあるが、Esoteric UX-3のほうが、きめ細かで滑らかな動きをしていたように思う。
撮影条件
Canon EOS 20D 撮影モードオート Tv(シャッター速度)1/6 Av(絞り数値)4.5 測光方式評価測光 露出補正0 ISO感度400 レンズ17.0 - 85.0 mm 焦点距離30.0 mm 画像サイズ3504x2336 画質(圧縮率)ファイン ストロボ非発光 ホワイトバランスオート AFモードAI フォーカス AF 現像パラメーターコントラスト やや強い シャープネス やや強い 色の濃さ やや濃い 色あい 0 色空間sRGB ノイズ低減切 ファイルサイズ2355 KB
スクリーン撮影Esoteric




  Esoteric UX-3


スクリーン撮影自作機




  DVD-PC1
スクリーン撮影拡大Esoteric



  Esoteric UX-3


上の写真の文字周辺と髪の毛の部分の拡大
スクリーン撮影拡大自作機



  DVD-PC1


こちらのほうが良質にみえる。
2. Double Blind Test (二重盲検法)

 機器の設定は、DVD-PC1とEsoteric UX-3のDVI出力を、DVI切り替え機CregaCG-PC4UDAの入力1と2に接続。出力はD2010に接続した。これで同じチャプターを再生機を切り替えながら、何回も視聴してゆく。

 験者は、特定のチャプター再生終了後、DVI切り替え機を切り替えて、再び同じチャプターを再生する。験者がどれを再生するかは、前もって用意した乱数表に従って行う。従って再生機がランダムに切り替わることになる。念のため、PCの操作音などで推定されないよう、ダミーの操作音を入れる。験者は被験者の視界から隔離し、被験者に切り替える事のみを伝える。

 被験者は、切り替わる毎に、両者の違いを記載してゆく。例えば最初に再生するチャプターを一律にAと記載してもらう。次に再生された同じチャプターがAによる再生と思えばAと記録。違うと感じればBと記録する。その画質や音質の良否でなく、違いに注目し記載してもらう。これを16回繰り返す。

 試験終了後集計し統計解析を行う。カイ二乗検定を用い、p<0.05以下を有意とする。これは帰無仮説を検証するもので、p<0.05だとAとBには違いがあることを証明することになる。音質や画質の良し悪しではなく、両者に違いがあることを証明する。違いを立証できなければ、良いも悪いもないという考え方だ。
例:験者X、被験者Yの場合
試行回数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
験者Xが参照する乱数 2 4 7 6 5 1 5 4 6 5 3 9 0 9 2 0
乱数に基ずく再生機 A A B A B B B A A B B B A B A A
被験者Yの回答 A B B A A B B B A B B B B A B A
Yの正解回数

2者択一なので、でたらめに回答しても平均50%は正解するはずだ。験者Xが参照する乱数が偶数の場合A、奇数の場合Bを再生する。この例では62.5%の正解率。しかし検定の結果はP=0.377。 従ってこの被験者Yは、AとBに差は感じていないことになる。
05.04.03
続く
 3.ワードクロック入力

 Esoteric UX-3にはワードシンク入力端子がある。他のクロックジェネレーターのワードクロックを入力できる。EsotericではG-0sなどのクロックジェネレーターを使用することを想定しているに違いない。

 自作DVD-PC1はDVD再生専用機として使用しているが、クロックジェネレーターとして使用することもできる。使用しているサウンドカードのオプションのドーターカードWCM9632が、1つのワードクロック入力端子と、2つのワードクロック出力端子を持っている。このワードクロック出力端子からHDSP9632のワードクロックを取り出し、UX-3をシンクしてみた。UX-3のクロックと自作機のクロックを比較することになる。
WCM9632

DVD-PC1のRME HDSP9632 Word Clock Module. 右の平型コードでHDSP9632からのクロック信号が供給される。右上がワードクロック入力端子。左上の2つがワードクロック出力端子。そのうちの1つからワードシンク出力を取り出した。空いている端子はターミネーターを入れている。
UX-3バックパネル

UX-3のバックパネル。左下にWORD SYNCとあるのが、ワードクロックの入力BNC端子
UX-3のDVD-PC1による48kHzワードシンク

UX-3のフロントパネル。外部クロック入力のON・OFFは左のCLOCK MODEスイッチで切り替える。写真はDVD-PC1からの48KHzワードクロックでロックしている状態。中央パネルに「WORD 48」と動作状況が表示される。
音質比較:視聴はディスクを再生しながら、CLOCK MODEボタンでON/OFFを繰り返しながら比較した。DVD-PC1でシンクしたほうが、印象が良い。UX-3のクロックよりも、自作機のクロックのほうが精度が高いのかもしれない。音色の変化は中高域が中心だが、全帯域にわたって、締まってスピード感のある音になる。フォーカス感が良くなり、音の分離が良い印象。UX-3のクロックでは、低域の量感が豊かだったが、これが随分締まる。人の声が前に出て定位する。面白いことに、これはDVD-PC1単体の音質に近い。
05.04.05
その他のクロックジェネレータはこちら(Esoteric G25U, ABS9999)